高齢出産のリスク

年齢を重ねることにより、女性の体には様々な変化が現れます。妊娠・出産に大きく関係する変化の一つに、まず女性ホルモンの変化があります。女性の体内では、女性ホルモンの刺激により、卵巣で卵胞が作られ、卵子となって排卵が起こります。また、子宮内膜を妊娠に適した状態に整えるのも女性ホルモンの働きによります。このように、月経や排卵が定期的に行われ、生殖機能を維持する為には、女性ホルモンがバランスよく分泌されることが大切です。

 

女性ホルモンは7〜8歳くらいから分泌が始まり、思春期(8〜19歳)に急激に増えます。そして、成熟期(20〜44歳)には安定して分泌され、妊娠・出産に最も適した状態になります。そして成熟期の後半(30代後半〜)には、女性ホルモンの分泌が徐々に変化していきます。30代後半からは、妊娠に必要な排卵が起こりにくくなり、妊娠しにくい体になっていくと考えられているのは、このためです。

 

また、卵巣も年齢により老化します。卵巣機能が活発な時期には卵子も元気なのですが、卵巣の老化とともに、卵子の劣化も起こります。卵子は女性の体内に、赤ちゃんのときからすでに700万個もの原始卵胞があると言われています。生まれてからずっと体内にあるものなので、若い卵子のほうが元気だと考えられています。

 

しかし、女性ホルモンの変化や卵巣や卵子の老化に関しては、個人差が大きいのも事実です。規則正しい健康的な生活を心がけ、ストレスや疲労をためないように気をつけましょう。適度な運動なども取り入れて、自分の体を健康に保つことで、高齢出産のリスクを大きく軽減する事ができます。また、女性特有の婦人病なども年齢とともに増えていきますので、婦人科健診を定期的に受けるなどして、自分の体をよく理解するように心がけましょう。

高齢出産における大きな心配事の一つに、「赤ちゃんへのリスクはあるのか」という事が挙げられます。高齢出産の場合、赤ちゃんに染色体異常が現れる確立が高くなると言われています。染色体異常の中で、一番頻度の高いものがダウン症候群です。高齢出産とダウン症の関係が大きく取り上げられているのは、このためです。

 

ダウン症は、21番目の染色体が1本多いことによる、先天性の染色体異常です。知能や運動能力などに発達の遅れが生じたり、心臓に先天性疾患を伴うこともあります。染色体異常の中では比較的軽いものです。一般的にダウン症の発生率は、20歳で1500人に一人、30歳で1000人に一人、35歳で300人に一人、40歳で100人に一人、という割合で確立が上がると言われています。

 

我が子が元気で生まれてきて欲しいと願う気持ちは、赤ちゃんを授かった人なら、誰でも抱く自然な気持ちです。それなのに、高齢出産だからといってこうした数字で脅かされるのはとてもつらいですね。これらの数字をどう捉えるかは、個人の判断によりますが、多くの高齢出産の妊婦さんが「どうしても産みたい」という強い気持ちのもと、勇気を持って出産に臨み、元気な赤ちゃんと対面していることは事実です。

 

また、染色体異常の有無について、対策がないわけではありません。出生前検査といって、出生前に先天性異常の有無を調べる方法がいくつかあります。高齢出産とダウン症の関係には、出生前検査も大きな役割を持ちます。出生前検査については高齢出産と羊水検査のページで詳しく説明していますので、参考にしてください。

一般的に行われている出生前検査には、羊水検査、血液検査、絨毛検査があります。まず、羊水検査ですが、妊娠14〜18週ごろに羊水を約15〜20mlほど採取し、その中にある胎児の細胞の染色体を分析して検査します。かなり確実な検査結果が得られるため確定診断検査として位置づけられています。ただし、検査には高額な費用がかかり(8万円前後)、羊水採取のために子宮に針を通すので、流産や破水を誘発する危険があります。羊水検査における流産や破水は300回に1回くらいの割合で起こるとされていますので、よく考える必要があります。

 

血液検査は、妊娠15〜18週ごろ、ママの血液を約1mlほど採取して、血液中のタンパク質やホルモンなどの物質の濃度を測定して、赤ちゃんの状態を調べます。母体血清マーカーテストとかトリプルマーカーテストなどと呼ばれています(3種類の物質の濃度を測定する為)。最近ではクアトロテストと呼ばれるものもあります(4種類の物質の濃度を測定する)。血液検査は安全で費用も2万円前後で受けられますが、確実な結果ではなく確率値を出すに留まります。そのためスクリーニング検査(ふるい分け)として位置づけされています。

 

胎盤となる絨毛を採取し、その細胞を検査する絨毛検査は妊娠10週ころから可能で、ほぼ確定的な結果が得られますが、検査による流産の危険が羊水検査より高く、遺伝的な病気が想定される場合にのみ行われています。

 

以上のような出生前検査については、その危険性や得られる結果、費用などをよく考えた上で受けるかどうかを決める必要があります。また、倫理観や人生観にも関わる問題ですので、ご夫婦でよく話し合われることをお勧めします。婦人科によってはカウンセリングなどを行っているところもありますので、上手に利用してください。

高齢出産と並び、現在の妊娠・出産事情におけるもう一つの大きな特徴に、不妊治療が挙げられます。不妊の原因はその人によってさまざまですが、子供が欲しいと思っているのに、医学的な処方を受けないと妊娠できない状況にある人が、多くなっています。長年不妊治療をしてきて、気が付いたら高齢出産の年齢になっていた、というケースは少なくありません。不妊治療と高齢出産の関係を見ておきましょう。

 

晩婚化が出生率を下げているという社会現象が話題になって、数年が経ちますが、その背景には晩婚による不妊リスクの増加があります。年齢が高くなることにより、妊娠する能力(妊孕力)が徐々に低下し、40代で自然妊娠する確率は数パーセントにまで落ちると言われています。30代以降は、不妊の原因となる婦人病の罹患率も高くなります。高齢出産とはいえ、妊娠できたことは何より喜ばしいことなのです。

 

不妊治療は、一般不妊治療に2年位、高度生殖医療に3年位という長いスパンで治療が進められます。長ければ5年間を不妊治療に費やすことになるかも知れません。30歳で治療を始めたとしても高齢出産の年齢で初めて妊娠・出産する、ということは、十分にありうる状況です。こうしたことも考えに入れて、自分が何歳くらいで赤ちゃんを産みたいかを、もう一度よく考えておく必要がありますね。

 

また、不妊治療の後にめでたく妊娠できたというケースでは、多胎妊娠の確率が高いのも特徴です。自然妊娠の場合では、高齢出産だから多胎妊娠が多いということはありませんが、不妊治療(高度生殖医療の場合)の過程において、多胎妊娠になるケースは少なくありません。多胎かどうかは妊娠6週頃から判断できるので、医師の指示に従って、安全に出産できる方法を選択することが重要です。

流産とは、妊娠22週までの間に胎児が何らかの理由で亡くなってしまうことを言います。実際には妊娠10週頃までの流産が最も多く、受精卵の染色体異常によって起こります。こうした流産を自然流産・初期流産といい、全流産の8〜9割を占めます。ママの年齢が高くなると赤ちゃんの染色体異常も若干増えることや、卵子も年齢と共に老化してくることなどから、高齢出産は流産しやすいと言われます。自然流産の発生率も若干高くなります。全年齢における流産率が10〜15%ですが、高齢出産における流産率は20〜25%前後と、若干高くなっています。

 

妊娠10〜12週以降の流産に関しては、受精卵の問題で起こるものは少なくなってきます。変わりに全体の5〜10%ほどですが、子宮内感染症や子宮頚管無料症、子宮奇形など、母体が原因で流産が起こることがあります。また、極度の疲労やストレスも流産の危険を招きます。このような流産は、ママが気をつけることである程度防ぐ事ができます。下腹部痛や出血があったらすぐに病院へ行き、安静を心がけることです。妊娠10週以降の流産に関しては、高齢出産か否かに関わらず、ママ側の注意が大切と理解してください。

 

次に、早産についてですが、妊娠22週以降36週までの間に赤ちゃんが生まれてしまうことを、早産と言います。そして、早産の危険が差し迫った状態を切迫早産と言います。流産に関しては赤ちゃん側に理由がある事が多いものですが、早産に関してはママ側に原因があることが多いものです。高齢出産だからといって単純に早産の率が上がるというわけではありません。高齢出産かどうかといよりも、妊娠中毒症や子宮筋腫などの合併症があるかどうかのほうが、早産のリスクが上がります。

 

早産の兆候は、お腹の張りや少量の出血です。こうした症状を自覚したら、すぐに医師の診断を受けましょう。早産で生まれてきた赤ちゃんは、本来ならママの体内で発育している時期に、お腹の外に出てしまったのです。専門の設備が整った病院で、適切な処置をする必要があります。赤ちゃんに大きな負荷をかけないためにも、早産の兆候が見たれたらすぐに受診しるようにしましょう。