高齢出産のお産から産褥

一般的に出産は、陣痛が起こって始まります。陣痛の間隔がだんだん短くなるとともに子宮口が全開し、破水して出産に至ります。陣痛が出産の始まりの目安ですが、破水が先になったり少量の出血などのおしるしが出産のサインとなることもあります。妊娠37週を過ぎると臨月となり、赤ちゃんがいつ生まれてもいい状態ですので、これらの症状が見られたときは、慌てずに病院へ連絡しましょう。

 

入院から分娩第一期までについて説明します。出産のために入院すると、まず診察と検査によってママと赤ちゃんの健康状態が確認されます。必要に応じて心電図をとったり分娩監視装置をつけたりします。始めは10分間隔くらいだった陣痛が、2〜3分間隔くらいになると、子宮口も10cm程度開きます。この時期までが分娩第一期とされています。高齢出産の場合は、子宮頚管が固く閉じているため、子宮口が開くまでに時間がかかる傾向があります。また、陣痛も微弱陣痛であることが比較的多いので、この分娩第一期が長くかかる傾向にあります。

 

陣痛の間隔が1〜2分間隔になり子宮口が全開になると、分娩第二期となり赤ちゃんの娩出が始まります。ここで陣痛室から分娩室に移動します。ママは陣痛に合わせていきみをかけ、赤ちゃんの娩出を助けます。痛みも強くなっており大変な時ですが、分娩室では医師と助産師の助言に従い、できるだけ冷静さを保つようにしてください。赤ちゃんの頭が子宮口から見えるようになることを「排臨」、子宮口から頭が出ることを「発露」と言います。初産の場合はこの時期に会陰切開することが多いものです。発露になったら、ママはいきみをやめて「ハッハッハッハッ」と短促呼吸に変えます。間もなく赤ちゃんの肩が出ます。分娩第二期は平均で2〜3時間とされています。

 

赤ちゃんが誕生すると、分娩第三期です。臍帯の処理と胎盤の娩出が行われます。赤ちゃんは産声をあげ、肺呼吸が始まります。へその緒を切ってもらい、産湯を使うなど、必要な処置を受けます。ママは出産後10分くらいで子宮が収縮し(後産)、胎盤がはがれて出てきます。このとき、軽い痛みを伴う場合もあります。切開した会陰の縫合を受け、しばらく分娩台の上で安静にしているうちに、赤ちゃんとの対面となります。

妊娠が分った時点で、具体的に「こんな出産をしたい!」というイメージできる人は、少ないのではないでしょうか。出産どころか、妊娠生活をちゃんと送れるかの方が心配!という気持ちの方が大きいでしょう。しかし、出産方法にはいくつか種類があり、産院によって選べる方法には違いがあります。自分が通っている産院がどんな出産方法を取り入れているか、最初に確認しておくといいですね。出産方法の種類を紹介しましょう。

 

普通分娩における一般的な出産方法には、ソフロロジ―、ラマーズ法、無痛分娩などがあります。ソフロロジーは、呼吸法とイメージトレーニングによってリラックスして出産に臨み、少しでも陣痛の痛みを軽減しようとする出産方法です。ラマーズ法は、呼吸法と自分がリラックスできる姿勢を組み合せることにより、痛みの軽減を図っています。また、ラマーズ法は夫が出産に立ち会い妻のサポートをするすることを推奨しています。ラマーズ法=立ち合い出産のように理解されているのはこのためです。

 

無痛分娩は陣痛の痛みを麻酔で緩和する方法です。出産の進行具合に合わせて、安全性を重視して麻酔薬を使い分けてくれますので、麻酔だからといって極端に心配する必要はありません。痛みが和らぐことで不安が軽減しますので、合併症などを持つハイリスクな妊婦さんは、この方法を医師と検討してみるとよいでしょう。無痛分娩のための麻酔は、局所麻酔、硬膜外麻酔などが主な方法です。

 

ソフロロジー、ラマーズ法は一般的な産科を備えている病院であれば、多くの病院が取り入れている方法です。しかし、無痛分娩は病院によって取り入れているところとそうでないところがありますので、確認が必要です。また、助産院や自宅などでアクティブバース(自分で出産の体勢を決める方法)や水中出産に取り組みたいと思っている人は、自分と赤ちゃんの状態をよく考えた上で決める必要があります。出産途中のトラブルなどにどう対処するかもしっかりと確認しておきましょう。

帝王切開になるときは、どんなときでしょうか。帝王切開にはあらかじめ手術日が決まっている「予定帝王切開」と、分娩の途中で急遽帝王切開に切りかえる「緊急帝王切開」があります。予定帝王切開になる場合は、さかご、重度の妊娠高血圧症候群、前置胎盤、多胎、未熟児出産、ママの骨盤が赤ちゃんより小さい(児頭骨盤不適合)、持病がある、などの場合です。妊娠37週を過ぎてから手術日を決めます。手術日が決められているので、予定を立てやすいですし、心の準備もしやすいと言えます。

 

一方、緊急帝王切開になる場合は、分娩中の胎児仮死、胎盤機能低下、胎盤の早期剥離、臍帯下垂、臍帯脱出、妊娠高血圧症候群などの急激な悪化、分娩時間の長期化、などです。普通分娩で出産に臨んだものの、分娩中にこうしたトラブルに見舞われた場合は、赤ちゃんとママの安全を最優先して帝王切開に切り替えます。高齢出産の場合、緊急帝王切開になる確率が若干高くなっています。高齢出産の妊婦さんは、微弱陣痛や産道の硬さなどが原因で出産が長引く傾向にありますので、母子の状態を考慮して早めに緊急帝王切開に切りかえるケースが多いのです。

 

帝王切開は、お腹を開いて赤ちゃんを取り出す出産法です。手術は、まず手術前の処置として導尿、血圧計と心電図をセットします。麻酔の後、開腹、赤ちゃんを取り出してへその緒をカット、子宮の縫合、次に腹膜や皮下組織を縫合、入院室へ戻る、という手順で行われます。開腹時には麻酔が使われ、母子の状態によって硬膜外膜麻酔、脊椎麻酔、全身麻酔などが選択されます。帝王切開の手術には硬膜外麻酔や脊椎麻酔が多く使われますが、緊急帝王切開の場合は全身麻酔になることもあります。

 

最後に帝王切開手術の術後について、説明します。手術が終わって麻酔が抜けるまでは無理に動こうとせず、ゆっくり休むことが大切です。麻酔が切れるとしばらくは開腹部が痛みますが、ひどく痛むときには痛み止めを処方してもらえます。手術後1〜2日は安静にし、食事も点滴で取ります。傷の痛みは徐々に引いてきます。抜糸は1週間後くらいに行われます。多くの場合、手術の翌日から歩くように指導されます。その方が回復が早くなると考えられているからですが、無理をせず、自分の状態を見ながら歩きましょう。退院は術後10日前後でする人が多いようです。産後の回復は、普通分娩と変わりません。

妊娠中、赤ちゃんを育てるために大きくなっていた子宮は、出産後、妊娠前の大きさに収縮します。子宮が収縮するときに、後産(後陣痛)といってお腹がギューッと縮むような痛みを伴うことがありますが、痛みの度合いは個人差があります。一般に初めての出産は後産が軽く、二人目以降は後産が強い傾向があります。高齢出産だからといって、後産がきついとか子宮の回復が遅いというようなことはありません。ただ、陣痛が強く来てスムーズに出産できた場合は子宮の回復も比較的早く、微弱陣痛で長引く出産だった場合は時間がかかる傾向にあるようです。

 

子宮の収縮に伴い、子宮内部に残った胎盤や卵膜が出血の形で排出されます。これは悪露と呼ばれます。産後2〜3日は悪露の量が多く、1週間くらいは月経時と同じような出血があります。その後、悪露は子宮の回復と共に徐々に減り、約1ヶ月でほとんどなくなります。このため、悪露は子宮の回復の目安になります。悪露が長引いて痛みを伴ったり、発熱などがあれば、産婦人科を受診しましょう。

 

出産時に会陰切開をした場合、産後数日は会陰の縫合部がひきつれて痛いことがあります。起きあがるときや歩くときなどに痛みを強く感じ、座るときもドーナツクッションは必需品という声もあります。また、排便排尿時に会陰の消毒をする必要がありますので、会陰が回復するまでが、思った以上につらかったという人も多いようです。会陰の縫合部の抜糸は退院前日くらいに行う病院が多いので、それまでの辛抱です。その頃には縫合部分も回復しています。退院後、1ヶ月くらいの間に徐々につれる感じもなくなっていきます。

 

出産後、ママの体の中では、さまざまな内分泌ホルモンが急激に変化して分泌されています。産後直後から1週間くらいの間に、無事に赤ちゃんを産んで幸せなはずなのに、焦りやイライラ、疲労感などの症状に陥ることがあります。こうした症状をマタニティー・ブルーと呼びますが、これは体内ホルモンの変化が心理面に影響を及ぼすために起こります。大抵は一過性のものですので、産褥期の生理的な変換点ととらえ、悲観的になりすぎずに過ごしましょう。

赤ちゃんが生まれると、母乳を飲ませながらの育児がスタートします。出産後5日ごろまでに出る、黄色みがかった濃い母乳を初乳といい、細菌やウイルス、アレルギーに対する免疫抗体が豊富で栄養価も高いことから、ほとんどの病院や助産院で赤ちゃんに飲ませてあげることが推奨されています。また、赤ちゃんがおっぱいを吸うと、母乳が分泌されると同時に子宮収縮を促すホルモン(オキシトシン)も分泌されるので、産後の子宮回復にも役立ちます。

 

母乳は赤ちゃんにとっての完全栄養食といわれます。母乳は栄養的に優れているだけでなく、母と子のスキンシップを促します。母乳をあげることは、ママと赤ちゃんの絆を深めるためにも大変よいことであると理解してください。ただ、生後間もなくの赤ちゃんはまだ吸う力が弱く、ママも出産直後は母乳の分泌量が少なく乳腺がしっかりと開通していないので、最初のうちは上手くできないことも多いものです。できるだけ頻繁に吸わせることで母子共に授乳に慣れてきますので、あきらめずに取り組んでください。

 

母乳の出には非常に個人差があります。出産直後から痛いほど胸が張って、赤ちゃんがまだたくさん飲めないため搾乳をしなければならない人や、いくら母乳マッサージをしても胸が張らずに粉ミルクと混合にした、という人もいます。高齢だから出にくいということもありません。最初のうちは、おっぱいの量が足りてるのかどうか分らないという人も多いと思いますが、慣れてくれば分るようになってきます。乳首の手入れや乳房マッサージなどの母乳ケアをまめにする、左右ともまんべんなく吸わせる、リラックスして楽な姿勢で授乳する、などに気をつけて、母乳育児に取り組みましょう。

 

母乳育児をするなかで、一番気をつけたいトラブルは乳腺炎です。乳腺の一部が充分開通せずに母乳が溜まってしまい、そこに細菌が入って炎症が起こる状態のことをいいます。乳房が赤くはれて痛み、発熱します。こうしたトラブルは、できるだけ悪化させずに回避したいものです。産婦人科では、出産後も母乳のトラブルのケアの仕方や母乳育児について指導してくれる「母乳外来」を併設しているところもあります。母乳外来専門の助産院などもありますので、いざというときの為に、ぜひチェックしておいてください。